午前10時。
良雄と鬼木、そして、尾崎は、国道3号線沿いにある海水浴場にいた。
国道に面した海水浴場客のための広い駐車場から、3つの段のついたコンクリートの階段を降りて、浜辺につく。3人は、今、そのコンクリートの階段の2段目に並んで座っていた。
良雄を真ん中に、良雄の左手側に鬼木、反対側に尾崎がいる。
良雄は、結局、ほとんど眠れなかった。机に向かって椅子に腰掛けたまま、時折うつらうつらと舟をこいだくらいだった。そして、朝9時、良雄は鬼木を誘って、この海岸に来た。
すると、尾崎がすでに、このコンクリートの階段に座っていた。
「ヒャッホー」尾崎はその時そう声を発して、「いやあ、すっかりオレもココが気に入っちゃって」と、いつものように豪快に笑った。
国道3号線を北に向かい、西側には、この海水浴場があり、東側には、国道と並行して鹿児島本線が通っている。
8月の静かな海をのぞむ良雄たちの左手遠くの方からゆるやかなカーブを描いて、その線路が見える。
「しっかし、今日も暑くなりそうだな・・・」
と、鬼木が言った時、その線路の上に3両編成の鈍行列車が乗って来た。
「おい、あの列車じゃねえか?」尾崎が言った。
“まさか、そんな、タイミングよく”
良雄が心の中でそう呟いた。
次第に、列車の走る音が、大きくなり、こちらに近づいてくる。海水浴場の広い駐車場の向かい側、国道のすぐそばに線路がある。3両編成の鈍行列車は、そこで、急ブレーキを効かせて、停車した。もの凄い大きな、鉄の軋む音が、良雄たちの耳にも聞き取れた。
「何だ?」
鬼木と尾崎が、良雄をあいだに挟んで顔を見合わせる。
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発売日 1983年 アルバム「MELODIES」に収録
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