夕暮れ。夏休み前の期末テスト初日。福田良雄は、家路を歩いていた。テストは、午前中で終了したのだが、そのあと、教室で、母の手作り弁当を食べ、勉強をした。
目の前には、緩やかな道幅の狭い下り坂が伸び、その道の両脇には、ポツポツと古い民家が建ち並ぶ。坂の向こうには、民家にはさまれるようにして、小さく海が見える。穏やかな青の波が、夕陽の赤に少しだけ染まっている。
しかし、良雄が見ていたのは、海ではなく、その手前、良雄から50メートルほど離れて先を歩く男女二人だった。一人は、良雄のクラスメート海江田和代。もう一人は、違うクラスの尾崎健吾だった。
(うそだろ、なんであの二人が・・・)
良雄は、頭からスーッと血が引いていくような感覚に陥った。
そして、なぜか頭の中では、安全地帯の『デリカシー』が流れていた。
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発売日 1985年 アルバム「安全地帯Ⅳ」に収録