「良雄、やっぱり理系に行くべきだったんだよ」良雄が和代に数学を教えたあと、和代が良雄に言った言葉を、良雄は脳みその中でゆっくりと揺らしながら、お好み焼きを一口ほおばった。目の前にいるのは和代・・・ではなく、鬼木勝彦、良雄の数少ない友人の中の一人だ。
ここは、その鬼木の両親が営むお好み焼き屋。1階が店舗、2階が住居になっている。テストは午前中で終了。今日は母親のお手製弁当もなかったので、良雄は、ここで昼飯をとる。
店は入口から入って、奥が厨房、その手前に4人掛けのテーブル席が、3席ずつ2列、計6席ある。客は良雄と鬼木のほかに1人、半袖のワイシャツにネクタイをしめた中年の男性がいた。良雄はたまにこうやってお好み焼きを食べに来る。食べに来るたび、鬼木の母親は、「いつもありがとうね」と言うが、いつも、”お金は要らない” と言う。あまりにも毎度毎度なので、良雄の母親は、たまに鬼木のところに、とれたての魚介類を持ってくる。
目の前の鬼木が、良雄に言った。
「昨日の”夜ヒット”見たか、大沢誉志幸、カッチョよかったな。スタジオ中走り回って、カメラ壊れるかと思ったよ」
「いやー、見てねーなー。ほんと? しまったなー」
鬼木も音楽好きだ。中でも、日本のロックが好きだ。このまえは、良雄は鬼木から、THE MODSのアルバムをカセットテープに吹き込んでもらった。
良雄のお気に入りの曲は、『TEENAGE BLUE』だ。
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発売日 1984年 アルバム「JAIL GUNS」に収録
- アーティスト: THE MODS
- 出版社/メーカー: Sony Music Direct(Japan)Inc.
- 発売日: 2013/10/23
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