夜、福田良雄は、弟と一緒の部屋で、椅子に腰掛け、机に向かい、ヘッドフォンで音楽を聴きながら、右手で、人差し指を支点に、中指と親指で、シャープペンシルをくるくると回していた。弟は相変わらず2段ベッドの上の方で、部活で疲れ果てた体を横たえてグースカと寝ている。網戸に張り付いた大きな蛾が部屋の中をうかがっていた。
(じゃーきのう、尾崎は、・・・)
良雄はきのうのことを考えていた。
(あれは、喧嘩をしたあとだったのか? それとも、喧嘩をする前?・・・)
確かにあれは、尾崎だった。尾崎は道の右側を歩き、和代は、歩道側、左を歩いていた。1回、和代の方を見た横顔は、間違いなく、尾崎だった。リーゼントの髪形、太い眉毛、彫りの深い顔立ち。
良雄は何故かその時、横道に折れた。”自分がいることがバレたらいけない”と思ったのだ。右折して、わざわざ遠回りをして、自分の家に帰ったのだった。
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作詞 いまみち ともたか 作曲 いまみち ともたか
発売日 1985年 アルバム「Freebee」に収録