学校は、夏休みに突入した。良雄たち3年生は、午前中だけだが課外授業がある。が、しかし、良雄は、愛用のママチャリに乗り、学校とは違う方向、海岸沿いを走る国道へと向かった。普段は徒歩通学で、学校からは自転車通学の許可はおりていないが、家には、「夏休みだからいいんだよ」と適当にごまかした。
良雄の住む町は、鹿児島の北西部にあり、海に面している。そこから国道3号線を北上すると、隣町との境界線あたりに、海水浴場がある。良雄はそこを目指した。
自転車でおよそ1時間。天気は快晴。額に汗がにじんだが、さほど疲れは感じなかった。
道路沿いに、海水浴場に面するようにして大きな駐車場がある。平日の午前中だが、それでも何台かの車があった。良雄は駐車場の隅にママチャリをとめた。
駐車場から砂浜へ3段のコンクリートで造られた階段がある。良雄はその階段の2段目に腰をおろした。
砂浜では、5、6人の小学生のグループが、浅瀬で、大きなゴムボートを取り合うようにしてはしゃいでいた。良雄の右手、遠くの方では、老婆がその孫らしき3、4歳くらいのピンク色のワンピース水着を着た女の子と一緒に砂遊びをしていた。
良雄はカバンの中から買ったばかりのウォークマンを取り出した。そして、ヘッドフォンを耳に当てようとしたとき、背後から声がした。「おーい、良雄っちゃーーん!」
振り向くと、その声の主は尾崎だった。
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発売日 1985年 アルバム「eyes」に収録
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