J-Song Stories

00年代の日本のロック・ポップをBGMにえがいた人間"熱いぜ"ストーリーです。

80’Sー17 ♪FENを聞きながら♪ HOUND DOG

「へっ、またイカ〜?!」

福田良雄の弟洋介が中学校の部活から帰ってくるや、食卓を見てそう嘆いた。

するとすかさず、すでに椅子に腰掛けていた祖母トラが、

「こら!何を贅沢な事を言うちょるか! ばち当たっど!」とたしなめた。

福田家は、先祖代々引き継がれて来た漁師の家系だ。

この家は、良雄の妹麻美が生まれた10年前に、それまでの古い建物を建て直して造られたものだ。まだ新しいがその間取りは7人家族には少し狭い。

1階は、玄関から入るとすぐに8人掛けのダイニングテーブルがあり、台所がある。そこで家族全員が3度の食事をとる。台所の隣には6畳の和室が2部屋続いている。1部屋は福田良雄の祖父福田治吉と祖母トラの部屋。もう1部屋は、福田良雄の父福田治夫と母敏子の部屋だ。あとは、洗濯機がある脱衣所と風呂場、そしてトイレがある。2階は2部屋。良雄と洋介の相部屋、麻美の部屋だ。

手を洗った洋介が席につく。長テーブルの、手前の長い辺に右から麻美、良雄、洋介。奥の長い辺には、麻美の向かい側に母敏子、そしてその隣に、トラ、治吉と並ぶ。治夫は、長テーブルの短い辺、麻美と敏子の間に座っている。ここが一番テレビが近いからだ。しかしテレビは治夫の真後ろに位置している。だから治夫は体を良雄の方に向けた状態で食べる。そして焼酎のお湯割りをちびちび呑む。テレビではプロレス中継がながれていた。

「もう弁当もイカ臭くってな。なあ兄いちゃん」

「こらあ! まだ言うか!」再び洋介とトラのバトルが始まる。

今日の福田家の夕食は、イカそうめんとカレーライス、厚揚げと里芋の煮物、キャベツの千切り大盛だ。

「あれ? 兄いちゃん、何で焼けてんの?」

洋介が、わさび醬油につけたイカそうめんを食べながら、良雄の顔を見た。

「良雄兄いちゃん、もしかして、海行った?」

おかっぱヘアーの麻美も笑いながら良雄の顔をのぞき込む。

真っ赤に日焼けした良雄は、

「・・・まさか」とだけ言って、自分自身もまた笑った。

早々に食事を終えた祖父の治吉が、椅子から立ち上がり、隣の畳の部屋に行く。代わりに、洗い物を終えた母敏子がようやく席につく。そして良雄に、

「良雄、あさってだったかね、三者面談」と言った。

「・・・あー、うん」良雄が答えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

作詞  藤村一清   作曲  藤村一清

発売日  1983年   アルバム「BRASH BOY」

 

 

BRASH BOY

BRASH BOY