J-Song Stories

00年代の日本のロック・ポップをBGMにえがいた人間"熱いぜ"ストーリーです。

80’Sー18 ♪ダディーズ・シューズ♪ ARB

んだよ、補導されたんじゃなかったのかよ」

スズキの軽ワゴン“エブリイ”を運転する父鬼木吾郎に、助手席に座っていた息子鬼木和彦がそう言った。

高校が夏休みに入ると、隣街にあるボクシングジムでの練習は、週末だけではなく、平日も行われるようになった。その練習帰り、夜9時過ぎ、カーラジオからは、巨人対ヤクルト戦の中継がながれていた。

「すまん、すまん。てっきり、・・・その、警官もおったからよぉ・・・」

前を向いたまま、ほとんど無表情で、吾郎が答えた。

鬼木吾郎は、先週の月曜日の夕方、出前の配達を終え、商店街にある自分の店の真横に隣接した駐車スペースに車を止めると、向かいにある理髪店の前で、海江田和代が西郷寛太を含めた3人組にからまれているところを目にした。そこへ、歩いて通りかかった尾崎健吾が、西郷寛太に殴りかかった。しかし、見事にそのパンチは外れ、逆に、尾崎は、見事に西郷から右ストレートを右目に受けた。尾崎は路上に倒れたが、すぐに起き上がり、再度、西郷に殴りかかろうとした。その時、自転車で巡回中だった警官が、50メートル程離れた商店街の入り口から、事態に気付き叫んだ。西郷たち3人は、一目散にそれぞれのスクーターに乗り、その場から矢の如く逃げた。警官は、そこから先、追うことはしなかった。

そのあと、まだなり立てたばかりかのような、その若い警官は、和代と健吾のところに行き、

「大丈夫か」と聞いた。結局、“正当防衛”ということで、尾崎健吾には何のおとがめもなかった。この“事実”を、鬼木吾郎は、きのう、理髪店主から初めて聞かされたのだった。

「しかし何でとめなかったんだよ」助手席の鬼木和彦が、シートを少し倒し、組んだ両手を頭の後ろにもって行きながら、運転席の鬼木吾郎にそう言った。

 

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作詞 石橋 凌 作曲 石橋 凌

発売日 1981年  アルバム「BOYS&GIRLS」に収録

 

 

BOYS&GIRLS

BOYS&GIRLS

 

 

 

ダディーズ・シューズ

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  • A.R.B.
  • ロック
  • ¥250