たとえ進学校でも、いわゆる不良生徒は何人かいる。尾崎健吾もその一人だ。尾崎は、だれともつるまない。一人で行動する。これまで、喫煙、無免許でのバイク運転、喧嘩、と何度か停学処分をくらった。
”今回で何度目だろう。鬼木の言う通り、本当にもう危ないかもな。次は退学かもしれない。”
良雄もそう考えていた。
机の上のアラレちゃんの目覚まし時計が、午後10時を指すところだった。そろそろ弟の洋介を起こす時間だ。良雄は、ヘッドフォンのプラグをラジカセから抜いた。こうすれば、音に反応して弟は起きる。
良雄は網戸の方に目をやった。蛾はいつの間にかいなくなっていた。網戸の向こうには、ぼんやりと満月がうかんでいた。
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発売日 1982年 アルバム「P.M.9」に収録