J-Song Stories

00年代の日本のロック・ポップをBGMにえがいた人間"熱いぜ"ストーリーです。

2016-04-01から1ヶ月間の記事一覧

80’Sー18 ♪ダディーズ・シューズ♪ ARB

「なんだよ、補導されたんじゃなかったのかよ」 スズキの軽ワゴン“エブリイ”を運転する父鬼木吾郎に、助手席に座っていた息子鬼木和彦がそう言った。 高校が夏休みに入ると、隣街にあるボクシングジムでの練習は、週末だけではなく、平日も行われるようにな…

80’Sー17 ♪FENを聞きながら♪ HOUND DOG

「へっ、またイカ〜?!」 福田良雄の弟洋介が中学校の部活から帰ってくるや、食卓を見てそう嘆いた。 するとすかさず、すでに椅子に腰掛けていた祖母トラが、 「こら!何を贅沢な事を言うちょるか! ばち当たっど!」とたしなめた。 福田家は、先祖代々引き…

80’Sー16 ♪時に愛は♪ オフコース

海江田由美子の実家・津山家は、この街の東側、車で30分ほど行った先の山の麓にある。 両親とも健在で、農業で生計を立てている。 三姉妹の長女である由美子は、地元の商業高校を卒業すると、東京の百貨店に就職した。そこで、その年、客として来ていた現…

80’Sー15 ♪守ってあげたい♪ 松任谷由実

オロナミンCを飲み終えると和代は、老婆に断りを得て、たばこ屋の黒電話をかりた。 そして自宅の電話番号を回し、和代の母に、たばこ屋まで迎えに来てほしい旨を伝えた。 夕飯の支度をしていた和代の母、由美子は、30分ほどして、赤のアルトに乗って、た…

80’Sー14 ♪ピーターラビットとわたし♪ 大貫妙子

和代は商店街を30メートルほど逆走したあと、すぐに左に折れた。 そしてその車1台がやっと通れるぐらいの路地をまた30メートルほど走り、右側にあるたばこ屋に入った。 「また何かあったらここにもぐり込め」 そうこのまえ尾崎健吾が教えてくれた店だ。…

80’Sー13 ♪David♪ 矢野顕子

裏通りにある静かな商店街。夕方6時を過ぎるとなおさら静かになる。 開いている店はほとんどない。 和代は、その商店街の半ばにさしかかったところで、左肩後方からせまる、けたたましいバイクのエンジン音を聞いた。 「チーースッ!」 この町の工業高校2…

80’Sー12 ♪消えない夜♪ 安全地帯

クラスは同じだったが、1年生の頃、海江田和代と尾崎健吾は一言も言葉を交わしたことがなかった。そんなことを思い出しながら和代は、学校帰り、途中女子バスケ部の後輩と別れたあと、一人、母と二人で暮らしているアパートへと向かっていた。 夕方6時を過…

80’Sー11 ♪SITTING ON THE FENCE♪ ザ・ルースターズ

尾崎は、夏の制服姿の良雄と違って、私服だった。半袖のTシャツの上に赤色の襟付きのシャツを羽織り、ブルージーンズにスニーカーだった。 「ひっ、さし振りー! 良雄っちゃん!」 軽やかに階段を1段下りて尾崎は、良雄の左側にヒョイと腰をおろした。 「…