お好み焼き屋の中は、ちょうど昼時、満席だった。商店街の近くには市役所があり、公務員の客も多い。店内は、入って左側に、8人が座れるL字型のカウンターがあり、右側に、カウンターと平行して、4人掛けのテーブル席が3つ並んでいる。良雄たちは、入り口から見て、奥のテーブル席にいた。テーブルの入り口側の方に、安藤聖子と徳之島明子が並んで座り、その向かいに良雄がいた。
「和代、来月のお盆にもう、東京に行っちゃうんだって」
クラス委員長の安藤聖子が、“おにき屋特製モダン焼き”を食べながら、隣の徳之島明子にそう言う。
「急なんだね」
徳之島明子がこたえる。徳之島明子は運動神経抜群だ。体育祭では毎年全校リレーのアンカーをつとめる。そんな徳之島明子が、
「良雄、今しかないよ! 告白するなら」と、目の前の良雄に、こちらは、“おにき屋特製オム焼きそば”を頬張りながら、そう言った。
「そうそう、言っちゃえ、言っちゃえ」
赤い縁取りの眼鏡をかけた安藤聖子も、けしかける。
良雄は、“豚バラとキムチのお好み焼き”を食べていた。そして、とりあえず、
「なに言っちゃってんだよ」
そう言って、おどけてみせた。
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作詞 売野雅勇 作曲 大澤誉志幸
発売日 1984年 アルバム「LA VIE EN ROSE」に収録